トップページへ

無安定マルチバイブレータで遊ぶ

Step 0: はじめに

仕事が終わると,子供を託児所にお迎えに行くのですが,家までは歩くと25分ぐ らいの道のりです.時間は夜7時を過ぎることもしばしば.かなり暗いです.そこで安全用に,LED が ぴかぴか光るバッチを作って子供にくっつけとこう,と思い立ちました.何せ試 作の道具も参考になる回路図も山ほどもっているんですから :-)

LEDぴかぴか,ということで,迷わずトランジスタ2石の無安定マルチバイブレ ータを使うことにします.いまどきは PIC などを使って,いろいろ高度な光らせ 方をさせられますし,ダイソーとか行けば100円でいろいろ売っているし, いまどきわざわざ作る必要もなければ,トランジスタにこだわる必要もないんですが,や っぱり,古典的電子回路工作の王道中の王道ですから.それになんてったって電子ブ ロックを使って試作ができるところが魅力.

「拡張キット光実験60」のNo.12の回路「無安定マルチバイブレータ LEDランプの点滅」を参考にします. 555 を使ったNo.18の回路「NE555 LEDランプの交互点灯」 でもいいんですが,トランジスタ回路のほうがあとでいろいろ面白く遊べるよう なので,こっちにしときます.

ページの先頭へ

Step 1: バーチャル電子ブロックで試作

まずは通勤電車の中で試作,としゃれ込んでみました.バーチャル電子ブロッ クで作った試作回路.じつはこれ,No.018 の回路「ランプの交互点滅」から, 電球をLEDにして定数を変えただけですね.発振のスピードを決め る抵抗とコンデンサ(22kΩ-47μF,47kΩ-22μF)は,同一にしてしまうと,バー チャル電子ブロックでは LED が両方 ON のまま発振しません.LED でなくて電球なら ちゃんと発振するんですけどね.不思議だなあ.

ページの先頭へ

Step 2: Electronic Lab 300 in 1 を使って試作

まあ動くらしい,ということで,こんどは Electronic Lab 300 in 1 を 使って,より本番に近い試作をしてみます.といっても,使ってるのは ブレッドボードと電源だけ.部品はみんなジャンク箱をあさって 拾い出したものです.

トランジスタは,ジャンク箱に 転がっていた 2SC373.もう売ってないねえきっと.本番は 2SC945 か 2SC1815 の安いほうにするつもりです.このあたりのトランジスタはどれを使っても, 点滅速度には影響がないはず. LED もジャンク箱から掘り出してきたもの. おそらく TLR101とか,そんなおそろしくクラシックな型番のやつ.たぶん20年ぐらい前に買ったと思う. 小さく作りたいので,電源は単五2本か ボタン電池で3Vを作って供給するつもりです.バーチャル電子ブロックは 5V だったので,LED の電流制限抵抗やベース電流を流す抵抗の数値を 若干見直します.結局電流制限抵抗は100Ω,時定数を決める抵抗と コンデンサはいろいろ取り替えて22kΩ-10μF で決着しました. あ,22kΩが2本なくて,片方 10k+10k になってますな.

ま,なんとかピカピカしてますので,無事作れそうだということはわかりました. LED が暗いんですが,何せふるーいやつですから,高輝度タイプなんてもんじゃ ないわけで,これはまあ今どきのを買ってくれば同じ電流でもっと明るくなるんだろうと 思っています.

消費電流はテスターで測って約 10mA ぐらい.ほとんど LED 1 灯を光らせるのに 使われています.

ページの先頭へ

Step 3: ちょっと脱線,3段以上の無安定マルチバイブレータの実験

なひたふ新聞「なひたふ新聞読者の声」のバックナンバー28に, 管理人のなひたふさんによる,無安定マルチバイブレータを3段以上に拡張するアイデアが公開されています.これは面白いということで,さっそく バーチャル電子ブロックで試作してみます.

下の回路は,普通の無安定マルチバイブレータ回路を書き換えたものです.同じ 回路が2回繰り返されて構成されている様子がわかります.3段以上にするには, この繰り返しを伸ばせばよいのだそうです.ただし3段以上ではどう点滅するか はわからないよ,ともコメントがあります.

なーんにも考えないで,3段,4段,5段と伸ばしてみたのが下の回路群です. この例では,3段の場合,常に LED 2灯が点灯,1灯が消灯の状態になり,消灯 状態が左から右へ伝わっていくように動きます.4段では,点灯と消灯が交互に 繰り返す動きをします.5段では,光が左から右へ流れるように動きますが,点 灯と消灯のパターンはもはや早すぎてよく見えません :-)点灯消灯のパターンは, 時定数を決める抵抗-コンデンサの値によってかなり変わりますので,いろいろ 試してみると面白いでしょう.まだ配置スペースに余裕がありますから, もう少しつなげられそうですが,ここらでやめときます :-)

下の回路は,無安定マルチバイブレータの発振の理屈を理解したいと思って 作った実験回路です.左側のスイッチが OFF になっているときは, つまり前段のトランジスタが OFF になっていることを表わし, スイッチを ON にすると,トランジスタが ON になって,コレクタ-エミッタ間 が短絡状態になることを示しています.(ベース電流は,LED が点灯できる 余力を見込んで流すようにセットされているとします.たとえばLED に 10mA 流したければ,トランジスタの hFE をざっくり 100 として, 0.1mA をベースに 流すようにすればいいので,電源が3Vならば,ベース電流を決める抵抗値は R = E/I = (3-0.6)/(0.1*10^(-3)) = 24kΩなどと計算できます.これより小さく しておけばいいわけですね.) またコンデンサにかかっている電圧を電圧計でモニタしています.

電源を入れると,左端の LED が OFF(前段のトランジスタがOFFの状態),それ 以外の LED が ON の状態で安定します.ここで,スイッチを入れると,左側の LED が ON (前段のトランジスタがON)になると同時に,その右隣(左から2番目) のLED が OFF になります.やがてこの LED は再点灯しますが,再点灯と 同時に,そのまた右隣(左から3番目)の LED が OFF になり...というふうに,OFF の状態が左 から右に伝播する様子を観察することができます.

スイッチがOFF の状態では,左端の電圧計の針が上がっており,コンデンサに順 方向に(前段トランジスタのコレクタから次段トランジスタのベースに向かって) 電荷が蓄積されていることがわかります.スイッチをONにすると,右隣の LED が消灯すると同時に,左端の電圧計の針が下がりはじめ,真ん中の電圧計の針が 上がりはじめます.左端の電圧計の値がほぼ0V になったところで,左隣の LED が再点灯し,それと同時に真ん中の電圧計の針が下がり始め,左端の電圧計の針 が上がりはじめます.

この実験からわかることは,トランジスタをしっかりが OFF になる(ベース電圧が0または負になる) ためには,コンデンサにある程度順方向に電荷がたまっていたほうがよいみたいだということで, そうでないと,前段もON,次段もONになるような平衡状態になる可能性がある,ということです.

また気がついたこととして,回路の電圧によっては,トランジスタのエミッタ-ベー ス間電圧の絶対最大定格に注意しないと,トランジスタがこわれちゃうよ,とい うことがあります.たとえば 2SC945 や 2SC1815 では 5V ぐらいですから.ちなみに この回路の場合,-2Vを越える電圧がトランジスタのベース-エミッタ間に一瞬かかって います.

ページの先頭へ

Step 4: 学研電子ブロックで作った 3 段無安定マルチバイブレータ

学研電子ブロックを使って,3段の無安定マルチバイブレータを作ってみました. 「拡張キット光実験60」のブロックがあって初めて可能になります. 代替ブロックを使わないでできます. LED は R と G と,フルカラーLED の B を使っています.電流制限抵抗の値は 同じにできますが,B だけまぶしく感じたので抵抗値を少し大きくして電流を 減らしました.

ところが,おそらくコンデンサの残留電荷の影響か,スイッチを入れたときに発 振がはじまらず,全灯点灯したままのときがあります.どこかでトランジスタ OFF が始まらないと発振が始まらない...ということで,下の回路では,1μF のコンデンサを終段のトランジスタのエミッタ-アース間に入れて,これで電源 投入直後に初段トランジスタを OFF にできるかなあ,と思って入れてあります. でもとても根拠は薄い...とりあえず,こうしておくと,発振が始まらないというこ とがいまのところなくなっています.

ページの先頭へ

Step 5: いよいよ完成!LEDぴかぴかバッチ

さて,いよいよ本番の作成.8月30日の土曜日に秋葉原に行って部品の買い出しです.

トランジスタは 2SC1815.千石電商の2Fで10本100円.LED はやっぱり千石2Fに あった東芝の高輝度LED(品番控えるの忘れた).2V 前後で 20mA のやつ.赤, 緑,橙,黄の4種類があったので,ここでは赤と緑にします.青を使うなら電源 電圧が4.5Vとか6Vとか欲しくなるので今回は見送り.LED に20mA 流すとすると, 抵抗とコンデンサの定数はちょっと見直しが要ります.まず電流制限抵抗を100 Ωから47Ωにします.次に,ベース電流を決める抵抗を22kΩから10kΩにします. 時定数を合わせるために10μFのコンデンサを22μFにします.抵抗とコンデンサ は今回全部千石の地下で購入.抵抗は1本5円,コンデンサは10円.電源は単五 2本からとります.ケースはタカチの透明スチロールケースのPB-1という一番小 さいやつ.マルツパーツで100円.基盤はサンハヤトのICB-90というやつ.真ん 中で2つに折れるやつです.マルツで160円.千石1Fのほうがやすいかも.その ままだと基盤がほんの少し大きくて電池ボックスが入らなくなるので,基盤の端を少 し折ることにしました.カッターで筋を入れて,ラジオペンチでぺちぺち折って (とても簡単に折れます.楽でいいなあ),紙やすりで仕上げました.ケースに は基盤をとめるねじ穴4つと,千石1Fで買ったスライドスイッチ(売っている中 で一番小さいのを選びました)の穴(ねじ穴2つ+長方形)を開けました.日曜 日にこきこき穴あけをして,月曜日の夜に半田付け.小さい子供の目を盗んでの 作業はなかなかもどかしいです.基盤をとめるのに,最初スペーサを入れたら, コンデンサの背が高くてふたがしまらなくなり(笑),しかたないのでスペーサ を抜きました.次はコンデンサを寝かしてとりつけよ.

思った以上の出来栄え.指向角が8度と狭いこともあって,かなり見る方向にシ ビアかなと思いましたが.思ったほどでもなく,ぴかぴかバッチの役目には充分 です.正面から見ると相当まぶしいです.さすが最近の LED は明るいわ.でも, 赤に比べて緑が暗いです.そうか,緑は確か2.3Vぐらい下がるから,電流制限抵 抗をもうすこし下げないといけないんですね.R=(3-2.3)/(20*10^(-3))=35Ωだ から,33Ωぐらいでいいのかな.なお,電流はテスターで測って21mAぐらいでし た.電池は新品なので電圧は3.16V(スイッチON時)ぐらい出てます.

ボタン電池の電池ケースを探しましたら,LR44(1.5V)用のケースをマルツパーツで 見つけたので,いずれそちらでも作ってみるつもり.その場合は LED の電流を10mA にするつもりです.

あわてて作ったのと,久しぶりだったせいか,半田付けはぼろぼろ.ラジオペン チとピンセットはあるのにニッパがないというていたらく.何はなくともまずよ く切れるニッパがないと電子工作はだめだめですね.(はんだごてはまあいわず もがな.)あと,ドリルとやすり.ドリルはお金をけちって500円で1.2mmφの小 さいハンドドリルを買ってしのいだのですが,せめて2.5mmφぐらい開けられる ドリルじゃないとだめですね.やっぱりここは古式ゆかしくハンドドリル?いや いや,大人なので安直に電動ドライバ+アタッチメントで逃げようかと(笑). で,やすりをリーマ代わりにぐりぐりつかってましたらぽきぽき折れまして,手 には豆ができて,プラスチックケースに穴開けるぐらいで豆つくるなよ(笑). やすりをそういうふうに使ってはいけません.ちゃんとドリルで所定の径の穴を あけませう.配線用のスズメッキ線を買うのをサボったのもいけませんでした. 折った部品の足使ってます(笑).

まあ第1作はこんなものかしらん.どの店にどの部品があるか,行くたびに少しづつ見えてきます. ただ行くだけじゃだめなんですね.目的をもって買い物をしていると始めていろいろ見えてくるみたい. たとえば,IFTやOSCなどのコイルの類はラジオセンター以外だとどこで売っているかなあ,と長年思って いたのですが,今回千石の地下にいろいろあることを発見しましたし(そばにネジ類もありますね), やっぱりまずは行動ということでしょうか...

さてさて,最後の難題は,これを子供のリュックに取り付ける方法を考えること. ケースに穴を開けて金属リングでも通すことにしようかな...(2003-09-02)  というわけで暫定解.A8大のパスケースに入れてみました.パスケースがちょう どよいきつさで,ケースのふたをテープ止めしなくても大丈夫です.青いプラス チックの輪っかはせんたくばさみのように開きます.これで自転車やリュックに ぶらさげてやろうというわけ.パスケースとのつなぎの部分がどうみても強度不 足.どうしようかな.試しに子供のリュックにつけて歩かせてみたら,わざと振 り回したわけもないのに電池がはずれてしまいました.あわててスポンジをふた 側に貼り付けました.これ,引き戸の隙間ふさぎ用に買ってあったもののきれっ ぱし.(2003-09-03)

ページの先頭へ

Step 6: 調子にのって2号機,3号機

(工事中!)

ページの先頭へ
トップページへ